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―第36章 未だ覚めぬ≪夢≫― ここは自室の地下室。俺は≪夢の国≫とのやり取りを振り返っていた。俺達が≪夢の国≫のチートっぷりを身を以て体感させられてから2~3日が経過した。だが、その余韻は未だ抜け切っていない。 「……はっきり言って強すぎる。どうすれば≪夢の国≫を倒せる?」 あの時は戦いこそはしなかったが、圧倒的な力の差にただ逃げ回るのみだった。まず厄介なのがあの沢山の着ぐるみ達だろう。たぶん光にしたところで復活、若しくは新たに召喚するだろう。 それにあの黒いパレード。飲み込まれたら確実にヤバい事になるのは大体分かる。ただし、当たらなければどうという事はないだろう。 そういえば、≪夢の国≫の中には今までに捕われた人や都市伝説が多く存在するという。ならば― 「ディバイディングブレードか…」 確かに、ディバイディングブレードなら捕われた人や契約者、都市伝説を分離させることが出来るだろう。ただ、捕われた人々はどうなっているのか分からない。また、助け出したとしてその後はどうなる?運が良くても大怪我、最悪≪夢の国≫で一生住人として暮らす羽目に… 流石にそういう事態だけは避けたい。≪夢の国≫なんかに捕われてたまるものか。 それに「≪夢の国≫では人は死なない」というのも、かなり厄介だ。どうすれば奴を倒せるのか。それが分からない今、下手に手を出すべきではない。 「それに…」 やはり『組織』の中に≪夢の国≫の黒服が混じっていたか。そのお陰で今『組織』は弱体化してしまっている。黒服さんと禿さんは多分≪夢の国≫側ではないだろう。それよりも― 「黒服さんが面白い事になってるな…」 マッドガッサーによる性転換、か。噂によるとナイスバディな女性、だそうだ。 俺の持つPDAは月読とシンクロする事で、自宅の地下にある奴ほどではないが様々な情報を引っ張り出せる。 「一部では大人気だな…それと、将門公の方も動きを見せてきたか…」 「首塚」組織の方も徐々にではあるが活動を活発化させてきている。近いうちに『組織』vs.「首塚」組織の決戦の火蓋が切って落とされそうだな。 この戦いに関しては俺は傍観させてもらう事としよう。ただし、やられたら『組織』だろうが「首塚」だろうがやり返させてもらう。 その結果、『組織』に狙われようが、「首塚」に目をつけられようが構わない。逆に返り討ちにしてやる。ただし禿、お前だけは勘弁な? ……よし、とりあえずもう寝よう。今後のことはとりあえずゆっくり考えよう。 そう思い、地下室を後にする俺だった……が― 「あ……れ………?」バタッ ―どうやら俺はかなり疲れているのかもしれない。何とか地下室の階段を昇りきった所で力尽きる。一体俺はどうしてしまったのか? 「……大丈夫ですか?」 どこかで聴いたような声の感じ…女の声?あ…あなたは……一体……… ―待て!次回!!― 前ページ次ページ連載 - 結界都市『東京』
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恐怖のサンタ 悪魔の囁き&コークロア編 15 ――――四月。 各地で新生活の始まる今月の初旬は、どこも忙しいものらしい。 この学校町もその例外ではなく、うちのアパートの空き室にも、何人か新しく入居者が越してきていた。 こんな都市伝説がうようよしている町によく越してくるものだ。 越してきている当人の事情は千差万別なのだろうが、少なくとも俺ならこの町を選ぼうとは思わない。 ……都市伝説退治なんて奇怪な職を生業にしている俺が思うべきことではないのかもしれないけれど。 とにかく、今は何かとこの町に不慣れな人間が多くなる。 それはつまり、この町の地理に詳しくない人間が増える事を意味するわけで。 「………………」 「――――えぐ、うぐっ」 今俺の目の前で泣いている迷子らしき少女もまた、そんな被害者なのかもしれなかった。 ********************************************* 「ええと、その、なんだ。……どうした?」 「えぐっ、うっ……」 内心びびりまくりながら少女に尋ねてみるも、返答は泣きじゃくる声のみ。 幸い平日の、それもまだ昼にもなっていないような時間だからか、周囲に人影はない。 もし仮に第三者がこの光景を見た場合、俺がこの少女を泣かせているように見える事請け負いである。 「泣いてても分からないだろ。えっとほら、どこから来たとか、どこでお母さんとはぐれたとか」 「うぐっ……えうっ……」 ……迷子の子猫を前にした犬のお巡りさんはこんな気持ちだったのだろうか。 外見から推察するに五歳くらいの年齢であろう少女は、先程から一言もまともな言葉を発していない。 やり辛い所の話ではない。正直な話、俺の方も泣きそうである。 「(イイジャネェカ。見捨テチマエヨ)」 駄目押しとばかりに、脳に俺以外の声が直接響いてくる。 普通の感性を持つ人間なら跳び上がりそうなそれは、別にテレパシストが俺に語りかけているわけでも、漫画なんかで見られる俺の分身である悪魔が語りかけているわけでもない。 「(誰カガソノ内何トカスンダロォ? テメェガ立チ去ッテモ誰モ文句ナンカ言ワネェッテ)」 そう俺を怠惰な方向へと引きずり込もうとしてくるのは、デビ田。 今学校町を騒がせている「悪魔の囁き」という都市伝説の一個体である。 俺を堕落させ、支配するはずが失敗。現在は「悪魔の囁き」の大元から役立たずの烙印を押され、いつ消されるかとびくびくしながら俺の中で生活をしている。 「(泣いてる迷子を見捨てるわけにもいかないだろ、常識的に考えて)」 「(ハッ! ンナ『常識』ノセイデテメェノ家ハ都市伝説ダラケジャネェカ、イイ加減学ビヤガレ、へたれガ)」 「(はいはい。どうせ俺はお人よしですよー)」 どうしたものかと考えながら、適当にデビ田をあしらう。 デビ田が俺の中に巣食ってから数週間。 不本意ではあるのだが、この毒舌にも大分慣れてしまった。 「……けど、どうすっかなぁ」 「えう、うぐっ……」 見捨てはしない。そう考えた後ではあるのだが、解決策が一個も思い浮かばない。 手がない訳ではない。 一応、俺は都市伝説の契約者である。 その気になればこの少女の記憶を読み取って、それを元に親御さんを探す事も出来る。 それをためらってしまうのは、やはりまだ俺の中に「倫理観」が残っているせいか。 いや、捨てるつもりは全くないのだから、それで全然構わないのだけれど。 「……うぐっ、ぐすっ……」 「あー、えっと、んー……」 泣きじゃくる少女と困惑する俺。 そんな光景はしばらくの間続いた。 【終】 前ページ次ページ連載 - 恐怖のサンタ
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□トレーラー 流れ、揺蕩い、巡りゆく 水は全ての源です 世界を巡り続ける水から得られるものは多いはず 罪や穢れを水の慈悲で雪ぎ、輪廻の罪業を落としましょう そうして魂を磨き続ければ、今生での解脱も可能です さあ、今日もお勤めに励みましょう 都市伝説と契約者TRPG キャンペーン 『怪異緊急対策特命室 夜雀たちの事件簿』 「File.5:真峯慈雨聖会跡地」 __神何処 □ハンドアウト(敬称略) ■神無月・恭介 取り乱す三葉、タマと呼ばれていた都市伝説”夜”、そして未来から来た水無月が立ち去った後。三葉の生家…木暮神社に入れなくなった。それと関連性は不明だが、各地の都市伝説が異常に活性化しているらしく、ただでさえ人手の足りぬ組織は猫の手も借りたい状況のようだ。 そんな中、あなたは本部から帰ってきた暗い顔の水無月に話しかけられる。 ■生川・紗良々 三葉と未来から来た水無月の失踪、及び夜と名乗る謎の都市伝説。わからないことだらけの中、伝手を当たりまくってなんとか手がかりらしきものを掴むことに成功した。三葉が契約した「夜」という化け物は相当古い伝承に残っているらしく、古よりの名門「土御門家」ならば何か知っているかもしれないらしい。とはいえ京都の閉じた名門、そう簡単にアクセスできる筈もなく、「土御門遙」と名乗る当主代理の少女はとりつくしまなくあなたを追い返した・・・と室長に報告しにいくこととなった。気が重い。 ■薄瀬・幸 三葉と共に消え去った青年・・・未来から来た水無月が使役していた黒龍、彼女(?)の声はかつて倒した「りゅうじんさまのゆめ」とまるきり同じであった。その件を室長に報告した結果、「りゅうじんさま」の事情聴取を執り行うこととなった。現在あなたは室長そして水無月と共に「りゅうじんさま」の死体に向き合っている・・・。 ■灰ヶ峰・紅葉 三葉と未来から来た水無月が立ち去ったのに前後して、各地で都市伝説が活発化しており、三葉の案件を抱えた室員たちも様々な任務に駆り出される始末。そんな中、あたたは室長の様子がおかしいことに気がつく。妙にため息が多いし、影響を受けたか室長室・・・実験室13号の内装もいつもより暗い。とはいえいつも通りに仕事はこなしており、その日もいつも通りPC達を呼び出して、眉間にシワを寄せて告げた。「このクソ忙しい時に悪いが、参考人に繋がるかもしれない野暮用を頼まれちゃくれないか」 ・・・強烈なデジャブに、ズキリ、と脳が痛んだ。
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ゲーム王国編 第二話 【詞後硬直】 「無理、絶対無理。何これ、何なのこれ」 「何度も言わすな、『子泣き爺』だ」 「都市伝説じゃなくて妖怪じゃん! 水木しげるワールドの住人じゃん! こういうのは鬼太郎の仕事じゃん!」 『人面犬』と契約した翌日。 何故かはわからないが、都市伝説と戦うことになった。 都市伝説を憶えるのには実戦あるのみだとか言われたがそんなことはあるだろうか、いや、ない。 自慢じゃないが殴り合いの喧嘩どころか口喧嘩すらしたことない温厚な人間が実戦なんて無理。 というか、どうやって戦えってんだ。 「ヤバいヤバい、殺されるってマジで、死ぬって本気で」 「そう簡単に死にやしねえよ。殺させやしねえから安心しろ」 「怖い怖い怖い怖いいいいいいいい!」 「俺の話を聞け!」 あれだよ、『子泣き爺』って言えば泣き始めると巨大化して砂をかぶせてきて引っ掻いてちゃんちゃんこで窒息死させる無慈悲で残酷な凄い体臭の化物だよ。 子供の頃鬼太郎で見たことあるから間違いない。 ここで人生終了か、死んでしまうのか、もうあの無邪気な頃には戻れないのか。 だが。 だが、その前に。死ぬ前に。っていうかあれだ。 「死に……たく……ないいいいいいい!」 「ちょ、バカ、逃げんな!」 全速力でその場から逃げ去った。 こう見えても百メートルを十八秒くらいで走れる自信はある。 「逃げんなって言ってんだろ!」 あっという間に追いつかれ、首根っこを咥えて戻された。 徒競走で一位を取ったことのない経験がこんなところでも活かされるなんて。 「あああぁぁぁ~」 「言うこと聞けこの糞ガキ!」 「お前らみたいな万国ビックリショーの仲間になりたくねええええええ!」 ◆ □ ◆ □ ◆ 「お前達の仲間にはならない――そう言ったはずだが?」 同日、同じ場所。 時間だけが違った。先の時間が昼間なら今は夜更け。 ふたりの男が相対していた。 ひとりの名は江良井卓。 もうひとりの名は高城楓といった。〈ゲーム王国〉建国を目論む六人のうちのひとりである。 「敵にならないとの言葉を聞いていない」 だから、現れた。 シンプルな物言い。 「敵にはならん。勝手にしろ」 「……信用できない」 「ならばどうする」 単純に数だけで見ると江良井はひとり、彼らは六人。 江良井の能力である〈地獄の帝王〉を含めても――ふたり。数の上では優勢である。 「錨野はお前を敵にするなと言っていた。逆らうつもりはない」 彼らのリーダー格である錨野蝶助は、江良井だけは敵に回すなと厳命してある。 江良井の中に何を見出したのか多くは語らないが、単純な戦闘力だけではないようであることは確かだ。 無論、彼ら五人は錨野に逆らうつもりはないし、対峙するだけで汗が出てくるような江良井を敵に回そうとも考えない。 今こうして平然としていられるのはただの虚栄にしか過ぎない。 「ならそれでいいだろう。それとも――今ここで死ぬか?」 「――ッ!!」 江良井は何もしていない。ただ言葉を発しただけだ。 それなのに、体にかかるこの凄まじい圧は何だ。 都市伝説でも〈異常〉でもないこの見えない圧力は何だ。 純粋な殺意。純然たる殺意。憎悪や悲哀や恐怖や愉悦といった不純物のない、清流のように澄み切った混じりっけなしの殺意。 ふつふつと湧き上がる汗と脱兎のごとく逃げ出したい衝動をこらえ、高城が何かを口にすべく声を絞り出そうとした時――第三者が現れた。 「そうしてくれると助かります」 「な――」 現れたのは黒いスーツを身にまとう男。 言うまでもなく〈組織〉の黒服だ。 「とある契約者がこの付近で戦闘したとの報告があったので来てみましたが、それ以上のものが見つかりましたね」 「〈組織〉……!」 「如何にも。お初にお目にかかります。A-№107のナンバーを与えられている〈組織〉所属の黒服です」 「何の用だ」 「江良井卓さん、貴方の監視と高城楓さん、貴方達〈ゲーム王国〉の情報収集を担当しています」 口元に笑みを浮かべ、淡々と答える。裏がある笑みなのを隠そうともしないのは自信か否か。 「もっとわかりやすく言いましょう。――私は貴方達の敵です」 「そうか」 答えるが早いが、A-№107に真っ直ぐに突き進む。 その拳が黒服に届こうとした瞬間、その姿は消えた。 「意外に気の早い方だ。敵とは言いましたが戦いに来たわけではありません。少なくとも今日のところは、ですが」 「瞬間移動……?」 「私に課せられた命令はあくまでも貴方達の監視及び情報収集に過ぎません」 高城の問いに答えず、やはり淡々と口にするA-№107。 自身の拳が空を切った答えを探しているのか、何も言わぬ江良井。 そして続けざまに攻撃を仕掛けるべく走り出すと――電子的な音が高城から聞こえた。 いつの間に持っていたのか、右手に携帯ゲーム機を手にしていた。 音が聞こえると同時に標的を変えた江良井の手刀が高城の首筋に迫る瞬間―― 「『アメリカ村』発動」 高城の声が聞こえたかどうか、ふたりの男はこの場から消失していた。 ◆ □ ◆ □ ◆ 「死にたくないいいいいいいいいいいいいいいいい!」 「んだよ、ぎゃあぎゃあうるせーな」 首根っこを咥えられて『子泣き爺』のいた場所に引き戻されると、面倒臭そうに男がひとり立っていた。 中年――と呼ぶにはまだ若干早そうな、頭部が若干心許ないのを見るに中年のような。 「っと、何だお前」 『人面犬』を見て驚く男。そりゃそうだ、誰だって驚く。 って、隠さないとマズいんじゃないか? 「あー……その犬の契約者か」 「って驚いてないし!」 「んー、ま、確かに野良じゃない『人面犬』ってのは滅多にないかもな」 「いやいやいや、そっちじゃなくて『人面犬』そのものに驚こうよ!」 「都市伝説なんて驚くことじゃないだろ」 当たり前のことのように笑う男。 ああそうか、この男もどっかおかしいんだ。 「残念そうな人を見る眼で俺を見るのはよせ」 「いや、だって……なあ?」 「お前も契約者だな?」 「そうだけど?」 即答かよ、何なんだよ、知らない間に都市伝説ってこんなに市民権を得ていたのか。 きっと選挙とかもやってんだ。衆議院参議院の他に都市伝説議院ってのがあるんだよ。 「ゴロが悪いってーの」 「お前……その都市伝説どこで手に入れた? いや、質問を変えよう。――何と契約している?」 と、アホなことを考えていると『人面犬』が呟いた。 流石は犬なだけあって、都市伝説の臭いに敏感なようだ。 「そりゃ企業秘密だ」 「神、妖怪、噂、デマ、ネットロア……数多くの人外を見てきたこの俺でも初めてのタイプだ」 「何? そんなヤバいのこの人?」 「別に俺はヤバくねえよ」 「よく飲まれないな」 「そりゃそうだ」 何故か自信満々に男は答えた。 「飲まれにくくなる方法を俺らのリーダーから教えてもらったのさ」 「人の手柄じゃん! それ自慢するところ!?」 「そこはツッコミどころじゃねえ。――そんなことよりもお前、ここにいた『子泣き爺』はどうした?」 「消した」 あっけらかんと言い放つ男。 って消した!? あの化物を? 「お前の能力で、か?」 「イエス」 「その力は本当に都市伝説のものか?」 「イエス」 「どんな能力だ?」 「企業秘密」 「仲間がいるのか?」 「イエス」 「目的は?」 「企業秘密」 どうしよう……この置いてけぼりのやり取りにどう加わればいいんだろう。 『人面犬』の質問にイエスと企業秘密しか口にしないのを見るに絶対に怪しいのは間違いないんだけど、何がどう怪しいって聞かれると……。 犬は犬で何だか男相手に警戒してるようにも見えるし。 「っていうかさ」 「あん?」 「何だ?」 「あんた、何て名前なの?」 きょとんとした顔のふたり。いや、もう片方は犬だから一頭と数えるべきか。あれ、犬って一匹だっけ。 それは兎も角。この問いに、男はめっちゃ笑い出した。 「面白いヤツだな、お前さん」 笑いながら言われてもバカにされてるとしか。 「至村」 「?」 「俺の名前は至村賢ってんだ。〈ゲーム王国〉建国の為にこの町に来たのさ」 「目的……企業秘密なんじゃないの?」 ニヤリと屈託の無い笑顔で、男――至村賢は言った。 「だいじょぶだ」 続 前ページ次ページ連載 - 葬儀屋と地獄の帝王
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【陛下と僕と獣の数字 第12話】 「――――さん!」 声が聴こえる。 「――――――ジさん!」 誰かの、声。 「―――――セー―――――ん!」 そう、僕は切られて……切られた筈で……!? 「セージさん!」 飛び起きる。 胸を触る。 無い、傷がない。 「大丈夫ですか!?」 「え、あ、貴方は!?」 なんで彼女が此処に居る。 「大変なことになりましたよセージさん!」 「へ?」 「あのクラウディアって人の都市伝説が暴走したんです!」 確か星野美空さん……だったか 「あ、貴方はなんでそれを?」 「えっと、私実は……国の方から監視に派遣されてた者で 特に貴方を守るように言われていたのですが……貴方は私の都市伝説でなんとか助けたものの…… あ、治療系の都市伝説契約者なんですよ私」 「そうだったんですか……」 だから都合よく現れていたのか。 「今クラウディアさんは暴走しています、危険ですから急いでここを離れましょう?」 「……そういう訳にはいきません」 「え?」 「俺、あいつを助けてやらなくちゃいけない」 「ま、まって下さい!今彼女は理性を失って暴れるだけの存在になっているんです! 貴方が行っても止められるかなんてわかりません!」 「分からないなら……行くしか無いでしょう!」 「駄目です、私は命令されたとおりに貴方を危険から遠ざける責務があります」 潤んだ瞳で美空さんは僕を見つめる。 でも、それでもいかなくちゃいけない。 この人よりも……大事な人を迎えに。 「それでも…………」 僕は行かなくてはいけない。 「大事な人が待っているんです!」 美空さんは大きくため息を吐いて首を振った。 「これから私は貴方に抵抗されて気絶します その間に行って下さい」 「え?」 「さっさと行って下さい、もう知りませんよ そんな目をされたら止めるものも止められませんよ! あーあ、なんでそう綺麗な目で一人の女の子を守ろうと出来るかなあ契約者でもないのに!」 「ありがとうございます!」 「あーあー、なにもきこえなーい うっかり都市伝説の力で作った傷薬を落としてしまったけど気づかなーい 誰かにネコババされちゃっても知らなーい」 美空さんが落とした薬瓶を拾って走りだす。 ありがとう美空さん、最初おっぱい連呼してごめんなさい。 「本当にありがとうございます!」 【陛下と僕と獣の数字 第12話 続】 前ページ次ページ連載 - 陛下と僕と獣の数字
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【上田明也の協奏曲32~月夜に踊る踊る踊る~】 俺の契約する都市伝説にはまだ進化の余地がある。 これから戦いがよりいっそう激しくなることが予知される現在、俺はその進化をせねばならない そう結論した俺は夜中こっそりバイクで事務所を抜け出して特訓をしようとしていた。 努力をしなければ進化なんて、より強くなるなんてありえないからだ。 「…………さて、」 とは言ったものの何をしよう。 真夜中に一人で近所をうろうろするって完全に痛い高校生じゃないか。 夜の散歩で己の影に向かう俺かっこいいーってか? おお寒い寒い。 ――――――――――真面目に考えると 都市伝説の能力でまだ使ってない部分を引き出すか もう使っている部分を更に強化するか 自分がやれることはそのどちらかである。 自分は都市伝説の中でも“操作系”の都市伝説能力の扱いに適正があるらしい。 更に“操作系”に対する飛び抜けた才能から説明のしようがない系統の都市伝説能力も引き出せるそうだ。 逆に何かを“変化”させる能力や 有りもしない物を“作り出す”能力、 そして自らの身体を“強化する”能力も引き出しづらいらしい。 さて自分は都市伝説の“操作する”能力を引き出したが、それ以外には大して何もしていない。 ならば自分は操作系以外の能力を試しに引き出してみれば良いのではないだろうか。 「月の綺麗な晩だなあ……。」 何の気無しに空を見上げると月が綺麗だった。 赤くて黄色くて青くて黒くて白くて明るい丸い月。 さっきまで自分は何を考えていたのだかも忘れてしまいそうだった。 そうだ、俺は月夜の晩に散歩するといつもなにか出会いがある。 今日もそれを待つとしようか。 「イヤアアアアアアアアアアアアア!」 ああ、どこかで誰かが襲われている。 まあとりあえず助けに行ってみるか。 本当に助けるかどうかは襲われている人間見てから決めればいいし。 そもそもあれが今日の俺に与えられた出会いかもしれない。 俺は悲鳴の方向にバイクを走らせた。 俺が見たのは芥子色のセーターを着た女性に襲いかかる首無しライダーだった。 暗くても俺にはよくわかる、あの変態的なファッションセンスを除けば中々好みのタイプだ。 いいやむしろ! 可愛い女の子はちょっと変人なくらいの方が萌える! なぜなら親しみが持てるから! 俺は女性を守るようにその首無しライダーを奴のバイクごと我が愛車IMZ・ウラルwithサイドカー(戦闘仕様)で挽き潰す。 目前の敵の骨を粉砕撃滅するいい音が響いた。 「ライダー!ヴィア・エクスプグナティオ!? 私がマスターにでもなるの?」 何を言っているのだろう、頼むから日本語で話して欲しい。 「……ライダーって、仮面ライダー?」 「え、あ、……何でもないです。ってあれ? よく見たら貴方は…………。」 「お久しぶりです看護婦さん。お変わりありませんか?」 「今は看護師なのです。」 ――――――――――ていうか、知り合いだったのだ。 彼女は俺が先日起こした病院破壊事件で病院の建物が崩落する所に巻き込まれた看護婦だった。 俺が思わず助けてしまった後、精神が錯乱していたので放っておいていたのだが……。 「いやあそれにしても探偵さんには二回も助けられてしまいましたね。」 「なに、趣味でやってるから気にしないでください。 それよりもこの辺りは危ないですから……良ければ送りましょうか?」 「いやいや悪いですよ。 三回もお世話になってちゃ申し訳ないです。」 「それを言ったら俺だって前に病院で迷った時に道案内して貰っていますから。」 「ああ、そうだ! そういえばあの患者さんは今日退院でしたよね!」 「そう……ですね、まあ忙しくて中々あれ以来見舞いにも行けなくて……。」 「それは駄目ですよ、あの子……純ちゃんでしたっけ? 絶対探偵さんのこと好きですよ、罪な人ですねえあんな小さい女の子にまで好かれるなんて。」 「ははは……そうなんですかね?」 「そうですよそれは。」 「なのかなあ?あ、こっちのサイドカーに乗ってください。」 「わぁ、サイドカーなんて始めて乗ります!」 サイドカーに乗り込む看護婦さん。 ところで、サイドカーは運転席より少々低いところにある。 セーターで解らなかったが、上から見ると中々どうしてたゆんとしていらっしゃる。 素晴らしいことだ。 胸は無くても良いが有っても良い。 どちらにせよ均整のとれた麗しい形であれば良いのだ。 でも、この大きさは素晴らしい。それだけで一つの美として認めざるを得ない。 偶然にも立ったこのフラグは大事にせざるを得ないだろう。 修行なんて後回しだ。 友情・努力・勝利とか目の前のおっぱいに比べたら犬の餌なのだ。 「住所は?」 「えっと、北区の外れですね。ハッピーピエロ北区店の近くです。」 「了解。」 バイクは静かに走り出す。 月をかげらせる雲が伸びて辺りは急に暗くなっていた。 「そういえば探偵さん、探偵さんって何者なんですか? ビルを爆破してみたり空飛んでみたり……。」 「え、俺は探偵ですよ。ビル爆破したり空飛ぶだけの。」 「そうですか。」 「そうですね。ところで俺だけ質問されるのもあれなので俺から質問しても良いですか?」 「はい、どうぞ。」 「看護婦さんの名前を教えてください。」 「看護婦さんは看護婦さんです。」 「俺が聞いたのは名前です。」 「そうですか、じゃあ倉光とでも呼んでください。」 「解りました看護婦さん、じゃあそういうことにしておきます。」 「それじゃあ今度は私の質問です。 私をさっき襲った首の無い人は何者だったんですか?」 「都市伝説と呼ばれる物です。あれは首無しライダーかな?」 「なるほどなるほど……。」 何時の間にか質問合戦のようになっている。 面白い、俺と質問合戦しようなんて俺を知る人間は考えない。 だが今俺の前の前にいる彼女は俺をあまり知らないのだ。 ならば良いだろう、どうせだからとことん遊んでやろう。 まずはどれくらい狂っているのかを試すか。 「看護婦さん、あの事件の時に貴方は人命は軽いと言っていましたが……。 本当にそうなんでしょうか?」 「それはそうですよ、だってあんな良い人だった院長先生が死んでしまうんですもの。 だったら人間の一人や二人、簡単に死んでも構いませんよね。」 交互に質問をするというルールを無視してたたみかける。 「人間の一人や二人死んでも良い、それは正しいのでしょうか? 貴方はさっき襲われて悲鳴をあげた。 前に貴方を助けた時も貴方は恐怖だけでなく安堵の色を見せていた。 貴方自身は死にたくないんじゃないですか?」 「それはそうですよ、私はまだ死にたくないです。」 「貴方は人間じゃないですか。」 「ええ、人間です。人間だけどそれ以前に私です。」 「ふぅん……、そうですか。」 「じゃあ私からの質問を……。」 「ああ、【ちょっと待って】ください。」 狂う素質が有るかどうかのテストは及第点だ。 バイクを運転しているくせに隣に座っている彼女の瞳を覗き込んでお願いをする。 決めた、この娘で遊ぼう。 「もう、仕方ない探偵さんですね。」 「ありがとうございます。いや、【貴女に興味が出てきた物ですから】。」 言葉が浸透していく。 俺の言葉が、俺の気持ちが、相手の意志を無視して浸透していく。 相手は内側へ入り込んできた俺の気持ちを何時しか自分の気持ちと取り違える。 そして俺は相手のわずかな言葉から相手の気持ちを想像し、自分の中に取り込む。 勝手に想像して勝手に取り込んだ物を相手の内側にまた流し込む。 フィルターを使って都合の良いものだけを抽出するような作業。 「貴女は人間だけどそれ以前に自分は自分だと言いましたね。 だから人間が死んでも良いけど、自分は死にたくない。 ふむ、そうですよね。 世の中なんて無くなっちまえ、ただし自分除いて。 良くある話だ。 でもね、無くなっちまえとか、死んでも良いとか、 そんなこと考えている時にそう思っている対象って大抵人間全体じゃないんですよ。 むしろ人間ですらないことが多い。 貴女だって本当に無価値に思えたのは人間の命じゃない。」 「じゃあなんなんですか?」 「都市伝説のような非日常ですよ。 貴女が尊敬していた太宰院長の命を、尊い命を容易く奪った非日常。 貴女が非日常と言う言葉にどんな価値を認めていたか私には解らない。 でも心優しい一人の老医師の命をあんな簡単に奪う物ならば、 非日常という存在には価値なんてない。 そんなものただただ陰惨で残酷なだけだ。 そう思って貴女は非日常に絶望した。 でもそれを認めたくないから、貴女は人の命の価値がないと言うことにした。 …………なんて、戯れ言ですよ。探偵って仕事やってるとつい、こんな馬鹿なことを言ってみたくなる。」 自分で言っておいてあれだが自分は何を言っているのだろうか。 非日常の無価値さを認めたくないから、人の命の価値をおとしめて自らの平衡を保った。 だとしたら彼女はどれだけ非日常に夢を抱いているのだ。 「…………じつは、そうなのかもしれません。」 え゛っ? ……えっ? ―――――――ええええ!? どんだけ非日常に夢抱いちゃっているのこの子!? 「私、小さい頃から絵本が大好きだったんです。 お伽噺には何時でも出てくるじゃないですか、白馬の王子様。 ああいうのが何時か自分にも来てくれると信じて生きていたら何時の間にか大人になっていて……。 今も実家に暮らしていて両親に迷惑かけ続けで…… 趣味なんて絵本の代わりに何時の間にか嵌っていたゲームしかなく……。 女子力ダウンってレベルじゃない残念な現実ですよ。 そしてそこから逃げる為にまたゲーム等に逃避して……。」 たゆん 再びチラリと胸を見る。 あなたの女子力はどうみてもMAXです。 完全にカンストどころかオーバーリミットしてメーター振り切れているので安心してください。 「でも看護婦さん。俺思うんですが逃避するって悪いことですかね?」 「えっ?」 「俺なんてそこそこまともな家の生まれだったのですが家業が嫌で逃げ出しました。 商才だけは両親に似たらしくって探偵事務所は切り盛りできているんですけど…… まあこれも逃げですよね。 あと昔付き合っていた女性が最近結婚するらしいんですけど、 その結婚相手が俺のことをある理由から滅茶苦茶恨んでいてデスねえ……、、 なんていうかこのまま放っておくと後々面倒になりそうなんですけど俺は何も出来ていません。 まあこれもまたまた逃げですよええ。 とまあ学校町の名探偵と名高い笛吹さんですらこれですよ。 人間ってのはむしろ逃げない方が難しい。」 「名探偵……?」 「さっきの首無しライダーみたいなの退治して回っているんですよ。 料金は応相談、名刺には書いてませんけどね。 ちなみに暇な時は浮気調査やら失せ物探しやら人探しやらやってます。 都市伝説っていうかそっちの筋ではそこそこ有名なんです、そこそこ。」 「へぇ……。」 「で、まあさっきの逃げる逃げないの話に戻りますけどね。 現実から逃げるのは決して悪くないです。 ただ追いつかれるだけなんですから。 ただ追いつかれた時に痛い目に遭うだけですから。最悪振り切ればいい。 此処で問題なのはまたも貴女の言葉が貴女の心理を正確に表していないことなんです。 あなたは貴女が逃げているのは現実じゃなくて日常です。 ストレスの多い普段の生活から逃げたいと思っているだけです。 でも、貴女が逃げ道にしていた非日常も今回の事件で最低だと解ってしまった。 だから貴女は人の命の価値を切り捨ててまで非日常という自分の為の逃げ場を維持しようとした。」 「探偵さん、気になるんですけど……。」 「なんですか?」 「探偵さんが私を分析したことで私は日常にも非日常にも逃げ場がなくなっちゃったんじゃないですか?」 「いいえ、貴女はこれからも非日常を逃げ場にし続けたらいい。」 「え、だって私がもう非日常にも絶望しているって言ったじゃないですか。」 「ええ、でも日常と非日常は違います。 非日常は自らの意志で変えてしまいやすい。 日常は貴女以外にも沢山の貴女と関係有る人間が干渉してきます。 家族とか友人とか同僚とかですね。 そうするとそれを変えることに遠慮するでしょう? でも非日常ならそんな心配要らない。 なんせ貴女の非日常を知るのは私と貴女だけだ。 貴女は貴女の望むように貴女の非日常を楽しめばいい。 たとえば……、コスプレしてさっきみたいな都市伝説を倒してみるとか。 軽くヒーロー気分ですよ?」 「そんなの無理ですよ、だってあんなお化けみたいなの倒せる訳無いじゃないですか!」 「それが】【貴女の】【思い込みだ。」 なんとなく、遊びが最終段階に入ったと感じる。 あと少し方向性を示すだけで彼女は完全に狂う。 「そもそも都市伝説を倒すなんて簡単だ。 貴女も都市伝説の力を借りればいい。 いいや、それすら必要ない。 たとえば銃弾で眉間をぶち抜く。 もしくは毒薬でこっそりと命を奪う。 あとは俺みたいな人間を騙して都市伝説を無料で倒させても良いかもしれない。 まあ方法は任せますけど。 ありとあらゆる都市伝説について調べ抜いてその攻略法を探求していけば…… 極論ですが、只の人間でも都市伝説は倒せる。 そもそも妖怪だのお化けだの都市伝説の元になったもの達は 『人間に退治される為に生まれた』存在だと言われていますから。 彼等も所詮人間の望みから生まれた以上、人間に消されるのが宿命なんでしょうね。」 「…………なるほど。」 「わかってくれましたか? 只の人間だからって非日常に巻き込まれるだけである必要は無い。 むしろ楽しまないといけません。 物事は何でもハレとケがあります。 非日常を自分の望むように変革すれば、きっと楽しい人生を送れますよ?」 俺は微笑む。 彼女の顔が輝く。 眼と眼があってそこに一瞬の間が生まれた後、彼女は口を開いた。 「なるほどなるほど……そうですね! 最初からそうすれば良かったんだ、ありがとうございます!」 ――――――――――――――ああ、完璧だ。 もともと狂気に陥る素質が有る人間を完璧に堕とすのは何時でも楽しい。 だって彼等が本当に幸せそうにしてくれるから。 俺の作業が終わるとそこから先はたわいもない世間話をした。 お気に入りの中華料理店とか、お気に入りの麻婆豆腐とか。 そうやって話している内に何時の間にか彼女の家の前までついていた。 「困ったことがあったら何時でも言ってください。 これ、私のプライベートの方のメールアドレスと携帯の電話番号ですから。 都市伝説の倒し方までなら無料で教えられますし。」 「わぁ、ありがとうございます! あれ……今携帯もって無いんですか、赤外線通信の方が早いですよ?」 「そういえばそれもそうか。あんまりやったこと無いんだよなあ……。 これで大丈夫ですか?」 「はい、ばっちり登録されました!」 おいおい、白衣の天使のメアドゲットできちゃったよ。 流石俺、流石名探偵俺。 故意……じゃなくて恋の行方も操作……じゃなくて捜査しちゃうぜ!ってか。 「それじゃあ今日はここのところで。」 「はい、今日は本当にありがとうございました。 今度こそお礼させてくださいね、その中華料理店とかでご飯でもごちそうさせてください。」 「良いんですか?嬉しいなあ、無駄遣いして今週ピンチだったんですよ。」 今週ピンチとか当然嘘ですごめんなさい。無駄遣いなんてする性格じゃないです。 自分が持っているビルのテナント代も入っているのでほくほくです。 でもちょっとだらしないところを見せた方が良いじゃないですか、可愛らしく見えて。 心の中で看護婦さんに謝りながら俺はMZ・ウラルで事務所に向けて走り出した。 【上田明也の奇想曲32~月夜に踊る踊る踊る~fin】
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それは、明日 晶が、上田 明也から幼zy……少女、穀雨 吉静を預かっていた間のこと 「晶おねーちゃん、あれ、なぁに?」 「うん?…あぁ、アイスのワゴンだね」 穀雨と一緒に、食材の買いだしに出かけていた晶 …この穀雨と言う少女、外見に似合わずなかなか素敵な食欲の持ち主である 1人暮らしをしていた晶の家には、この少女の分の食材までは備蓄していなかったのだ 当然、買出しに出かける必要は発生する 「アイス?」 キラリーン 瞳を輝かせる穀雨 愛らしいその様子に、晶は釣られたように笑みを浮かべた 子供は苦手な晶だが、この穀雨と言う少女の無垢で無邪気な様子は、純粋に可愛らしいと思う 超能力を使わなくても、はっきりとわかるくらい伝わってくる感情は、見ていて何だか和んでしまう 「それじゃあ、荷物が増えて大変になる前に、食べようか?」 「いいの?」 いいよ、と頷いてあげれば、穀雨はますます瞳を輝かせた ぐいぐい、晶の手を引っ張ってくる 「早く行こうよー」 「わっ、とと、そんな引っ張らないでって」 苦笑しながら、穀雨に手を引かれて行く明日 アイスのワゴンに近づいていく、その最中 『-----わわっ!?』 「みゃっ!?」 「わたっ!?」 どんっ!!と 目の前から歩いてきた青年と、ぶつかってしまった 青年は、大きな荷物を抱えていて、前がよく見えていなかったようだ ぶつかった拍子に、荷物の中身が…リンゴが、道にぶちまけられた リンゴ、だけではない ぱらぱらと散らばっているのは…何かの、種? 『わ、わわわ……』 おたおたと、リンゴを拾い始める青年 リンゴは、転がりきる前に何とか拾えたようだが…ぶちまけられた種は、拾いきるのは大変だろう それを見て、穀雨が、種を拾うのを、手伝いはじめた ぶつかってしまったのが原因でぶちまけられてしまったのだから、手伝わなければと思ったのか… (…いや、違うか) 単純に、目の前で困っている人がいるから、助ける そんな動機で穀雨が青年を手伝ってあげているのに気づき、晶は笑みを浮かべた 本当に、いい子だ ……上田から、悪い影響を受けなければいいのだけれども 晶も青年を手伝って、種を拾っていってやる この形……リンゴの種か? 「はい、どうぞ」 「どうぞー」 「ア、アリガト、ゴザイマス」 晶達の言葉で、彼女達が日本人だと理解したのだろう 青年は、片言の日本語で、そう言って来た 晶は、改めて、その青年を観察する まるで、リンゴのように赤い髪の青年だ ひょろっ、とした頼りない長身を…言っちゃ悪いが、少々みすぼらしい服で包んでおり、ボール紙製の、ひさしの広い帽子を被っている …そして、よく見ると、裸足だ 街中を裸足で歩いて、痛くないのだろうか 「日本語、話せるの?」 「少シ、話セル、デス」 穀雨の言葉に、微笑んでそう言って来た青年 ぺこりと、頭を下げてくる 「親切、シテモラッタ、オ礼、スル、デス。アソコノ、ワゴンノアイス、ゴ馳走スル、デス」 「え、いや、そんな、悪いですよ」 どうやら、日本語がわかるようなので、日本語で応対する晶 …アメリカ暮らしをしてはいるが、彼女、英語がちょっぴり苦手なのである が、青年は人のいい笑みで続けてくる 「イエ、親切ニシテモラッタカラ。オ礼、シマス」 にこにこと微笑んでいる青年 …そして、アイスをご馳走してくれると言うその言葉に、瞳を輝かせている穀雨 ……うーん (…ま、いいか) 悪人とかではなさそうだし 「それじゃあ、お言葉に甘えて」 「アイスー!」 無邪気な笑顔の穀雨の様子に、晶も青年も、思わず和んだ笑みを浮かべたのだった 「ワタシ、ジョニー・アップルシード、イイマス」 もぎゅもぎゅもぎゅ 美味しそうに、バケツサイズの入れ物に入ったアイスを食べている穀雨 …これだけ食べて、おなかを壊さないだろうか そして、アメリカのアイスは、カロリーがとっても素敵な事になっているのだが…大丈夫だろうか 同じ女性として、そこを心配する晶 そんな最中、青年…ジョニーから、自己紹介を受けていた 「ジョニーさんか。私は明日 晶。この子は…」 「穀雨 吉静だよ」 口の周りにアイスをつけたまま、自己紹介した穀雨 …うん、口の周りを拭いてあげるのは、食べ終わってからでいいだろう 「ミス・アキラ、ト、ミス・ヨシズ、デスネ。ホントニ、アリガト、ゴザイマシタ」 ぺこり、と 改めて、頭を下げてきたジョニー 晶は、小さく苦笑した 「いえ、こちらこそ。ご馳走になっちゃって」 もぎゅもぎゅもぎゅ 再び、アイスに夢中になっている穀雨 …アイスに夢中で、多分、他の事は耳に入ってこないだろう そう考えて…穀雨は、ジョニーに尋ねる 「…ジョニーさん、都市伝説でしょ?」 「……!ワカル、デスカ?」 「うん、まぁ、ちょっと」 超能力と契約している晶 それくらいは、わかる …この、ジョニー・アップルシードと名乗った青年は、都市伝説だ だが、危険な存在ではない どちらかと言うと、聖人とか、そう言う類に近い存在のようだ 「ハイ、ワタシ、都市伝説、デス。リンゴ、アメリカ中ニ広メタ、言ワレタ、デス」 「あー…聞いたことあるようなないような。開拓者にリンゴの種を配った、アメリカ西部にリンゴをもたらしたって言われている人か」 …それで、リンゴの種を持っていたのか、あんなに大量に ちょっと、納得した 「アナタ達、都市伝説、怖イ、違イマスカ?」 「怖くはないよ。ジョニーさんは、危険な都市伝説じゃないしね」 危険な都市伝説だとわかったならば、そもそも、こうやってのんびり、穀雨をはさんでベンチ座って話していたりしない アイスだけご馳走になって、とっくに逃げている 「アメリカも、結構しゃれにならない都市伝説多いからね。でも、ジョニーさんはそう言うのとは違うでしょ?」 「…ソウ、言ッテモラエル、嬉シイ、デス。ソウ考エナイ、人間、多イ、デス」 そばかすだらけの顔に、笑みを浮かべるジョニー 都市伝説だと知られるだけで、大変な目にあう事も多いのかもしれない ジョニーは、晶と穀雨を、じっと見つめてきて… …そして、ごそごそと、持っていた荷物をあさりだした どうしたのだろう? 晶が首をかしげて、その様子を見つめていると…ジョニーは、一つのリンゴを取り出した それは、金色のリンゴだった 金メッキした、とか、そう言う感じはしない …元からこの色なのだ、と、そう確信できる、そんなリンゴ まさしく、黄金のリンゴだ 「コレ、アゲマス、デス」 「え…」 「アナタ達、ナラ、悪イ事ニハ、使ワナイ、思イマス」 渡された、黄金のリンゴ 晶は、それをじっと見つめる 「…これも、都市伝説…?」 「ハイ、ギリシャノ方ノ、神話ニ、出ル、戦争ノ原因、ナッタ、リンゴ、デス」 「もしかして、トロイア戦争の…?」 ギリシャ神話にて とある神と神の披露宴に投げ込まれた、黄金のリンゴ それには、「もっとも美しい女神へ」と書かれていた 披露宴に呼ばれなかったとある女神が、腹いせに投げたそのリンゴ 書かれた文字に、三人の女神が手を伸ばした 詳しくは割愛するが……ここから、トロイア戦争へと、話は動いていくのだ 「ワタシ、契約者、アッタ頃、ソノリンゴ、手に入レタ、デス。ワタシ、ソレ、アッテモ、使ウ、ナイ、デス」 「…でも、いいんですか?本当にもらっても」 「イイ、デス。アナタ達ナラ、大丈夫」 にこり、ジョニーは笑った そして、荷物を抱えてすくり、立ち上がる 「ソレデハ、ワタシ、モウ、行ク、マス。ミス・アキラ。ミス・ヨシズ。オ元気デ」 「アイス、ごちそうさまでした…ほら、穀雨ちゃん、お礼を言わないと」 「ありがとーございました!」 …おぉう、ジョニーと話している間に、穀雨の口の周りがアイスで凄い事にっ!? 慌てて、口の周りを拭いてやる晶 その、まるで姉妹のような様子に、ジョニーはにっこり、笑みを浮かべて リンゴとリンゴの種が一杯入った大きな荷物を抱えて、裸足で街中の喧騒へと、消えていった 後には、まだ何も書かれていない、黄金のリンゴが一つ 残されていったのだった to be … ? 前ページ / 次ページ
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さて、自分達の部屋はどこだったか? ユグドラシル内で、うっかりと迷子になってしまった裂邪とミナワ …部屋番号、ちゃんと覚えておくべきだったか どうしようか、彷徨いながら歩いていて ……ふと 視界に、小さな女の子の姿を、見つけた おかっぱ頭に白いブラウス、真っ赤な吊りスカート姿の、少女 世界樹内の通路に添えつけられたベンチに腰掛け……とろん、とした眼差しで、半分眠りかけているようだ うとうと、うつらうつらしているその様子は……どこか、幻想的でも、あって 思わず、裂邪とミナワは、その姿に引き寄せられた うとうと うつらうつら… ……こっけん 「「あ」」 あ そのまんま、横に倒れた ぱちり その衝撃で、目を覚ましたのだろうか? 可愛らしい瞳が見開かれ、裂邪とミナワを視界に納める そして 「………みぃ?」 ………鳴いた そのまま、にぱ~、と笑みを浮かべてくる まるで、天使のような、笑顔 ロリコンの裂邪でなくとも、ついつい、見とれてしまうというものだ 「…都市伝説の、気配?」 「みー??」 ふと ミナワが、それに気付いた 少女から感じる、都市伝説の、気配 都市伝説契約者ではなく、都市伝説、そのものの… 「み?おねーちゃんは都市伝説で、おにーちゃんはけーやくしゃ?」 少女も、ミナワが都市伝説である事を そして、裂邪が、契約者である事を、見抜いたようだ …COA内に、そして、ユグドラシル内にいる、都市伝説 すなわち…恐らくは、COA事件解決に動いているものの一人なのだろう そう、あたりをつけた裂邪 この少女と、接触を取ってみることにした ミナワの手を引き、少女に近づく 「はじめまして、えぇと…」 「私は、花子さんなの」 ぴ!と元気に少女は名乗ってきた なるほど、「トイレの花子さん」か 確かに、そのようなイメージの服装をしている 裂邪とミナワも、花子さんに名前を名乗った …その間、花子さんの視線が、ミナワに集中していたのは気のせいだろう、多分 ちょっと羨ましそうに見えたのも気のせいだろう、多分きっと 「裂邪おにーちゃんとミナワおねーちゃんは、ここに引っ張り込まれたの?それとも、自分達から入ったの?」 「俺達は、自分達の意志で、だな」 「み!なら、けーやくしゃと一緒なの」 けーやくしゃ どうやら、花子さんには契約者がいるようだ しかし、その姿が…見えない 「花子さんの契約者さんは、どこにいるんですか?」 「けーやくしゃは、今、ここの「組織」の人達と、難しいお話をしてるの。だから、花子さんはここで待ってるの」 「…難しい話?」 「そうなの。無力な一般人を預けるのだから、本当に信頼できるかどうか見極めなくちゃいけない、って、けーやくしゃは言ってたの」 ちょっぴり難しい事を、花子さんはさらりと言い切った ……確かに、花子さんの言う通りだろう 恐らく、その契約者は、事件の被害者を保護して、ここにたどり着いたのだ それを預けるからには、絶対の信頼がある相手でなければなるまい 「ここに、悪い人達が来て暴れないか、とか、色んな事をチェックしなくちゃいけないの。特に…」 「……ここを管理している者が。他者の命をどのように見ているか…………少なくとも、他者の命を物のようにしか扱わない奴や…………他人を平気で実験材料にするような奴がいるならば。任せたくはない」 聞こえて来たのは、高校生くらいの少年の、声 見れば、前髪で目元がよく見えない少年が、近づいてきていた っぱ、と 花子さんが、満面の笑みを浮かべる 「けーやくしゃ、お話、終わったの?」 「……あぁ、待たせて、すまない」 花子さんの言葉に、その少年は答える ……何故、だろうか その少年を、見た瞬間 ぞくり、悪寒を感じたのは? 「…?」 少年が、裂邪とミナワを見た……の、だろう 目元は見えないが、顔を向けてきた事で、それを感じ取る 「けーやくしゃ、このおにーちゃん達も、事件を解決するために動いてるんだって」 「……そうか」 花子さんの言葉に、少年の反応は………薄い 興味を持っていないような 関わる事を、避けているような……そんな、気配 事実、少年は花子さんの手を引いて、さっさと立ち去ろうとしているようだった だが 「…?お知り合い、ですか?」 ふと 虚空を見て、誰かと会話したように…見えた それは、現実世界と、ボイスチャットで会話でもしているような、様子で 『裂邪、ミナワ?聴こえるか?』 「え?」 「へ?…翼のにーちゃん?」 『あぁ、良かった、そっちにも繋がったか』 そして 現実世界からのボイスチャットの声が、裂邪とミナワにも、届いた 『龍一、この二人は、信用しても大丈夫だ』 「………わかりました、翼さん」 翼の言葉に、龍一が頷く くるり、裂邪達に向き直った 「………はじめまして。獄門寺家 若頭 獄門寺 龍一………契約している花子さんと共に、今回、事件の解決に、動かせてもらっている」 小さく頭を下げ、そう名乗った龍一 頭を上げた、瞬間……その長い前髪の間から、高校生にしては鋭すぎる眼光が、見えて その、目に 裂邪は一瞬………何か、不吉にも似た、重苦しい気配を覚えたのだった to be … ? 前ページ次ページ連載 - 花子さんと契約した男の話
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最終回 「私キレイ?」 女は男に問うた 「さあね、そのでかいマスクのせいでなんとも言えないな つか、顔のこと聞きたいんなら外すのが道理ってもんじゃねえのか?」 飄々とした態度で男は答える ――――まるでこの後起こることが全て分かっているかのように 眉間に青筋を立て、女はマスクを毟り取る 「これでも・・・キレイかー!!」 その女の口は耳まで裂けていた しかし、男は少しだけ困った顔をしながらこういった 「ワオ、こりゃビックリの不細工面だな 下手に顔弄ろうとするからそんな事になるんだぜ?」 「・・・貴様ァッ!!」 鎌が振り下ろされる 口を裂くのではなく、殺意に満ちた一閃 口裂け女が勝利を確信した――――刹那 ガキィンッ!! 予想したものとは違う手ごたえ 鎌は堅牢な何か受け止められていた 男の手には――――否、手があった場所からは巨大な赤いものが生えている 巨大な、蟹の鋏 愕然とした女の肩にムチのように飛来した何かが食らいついた 「ぐうっ!?」 海のギャング、ウツボである ウツボは体を捻り、女の腕を引きちぎる 「わ…私の腕がああああああああ!!!??」 見ればウツボは男の肩からその痩身を伸ばしている 「お前は・・・お前は一体・・・!?」 「うるせエぞ、ドブス」 続けて男の腹から巨大な顎が伸びる――――鮫だ 「お前は魚の餌だ」 放たれた海の王者は貪欲に女を噛み砕き、飲み込んだ 「けっ・・・日本を代表する都市伝説だが、こんなもんかい」 「国民的アニメには、叶わなかったみたいだな」 「さ~て、来週の都市伝説は?」 都市伝説名【サザエさん最終回】 <能力>体を自由に海産物に変化させることが出来る 「単発もの」に戻る ページ最上部へ
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王隠堂ぼたんには悩みがある。 二、三日前から変な電話がかかってくるのだ。 prrrrrr prrrrrr prrrrr 「はい、もしもし」 「私メリーさん、今」ガチャン これだ。 意味も意図も分からない悪戯電話。夜中にもかかってきたため、ぼたんは寝不足である。 それ自体は携帯電話の電源を切ることで解決したのだが、電源を入れればすぐに携帯が鳴りだす。 これでは友達と連絡もとれない。 prrrrrr prrrrrr prrrrr 「……はい、もしもし」 何度目かの着信にぼたんはうんざりしながら、携帯を耳にあてる。 ぼたんは、そろそろきっぱりと言ってやらなければなるまい、と考えていた。 「私メリーさん、今あなたの後ろn」 「貴女ね、迷惑って言葉知ってます?」 「えっ」 「昼も夜も電話してきて、こっちにも都合があるんですよ?だいたいこの電話番号どこで知ったんですか?ストーカーですか?警察呼びますよ? 貴女、声からしてまだ子供でしょう?電話は玩具じゃないの。こんな事したら、お母さんやお父さんが悲しみますよ。夜中に意味も無く起こされたら、 貴女だって嫌でしょう?だいたい」 「うっっさいわあああぁぁぁ!!」 「後ろにいるって言ってんだから振り向きなさいよ!何なのよ!?いつまでもくどくどと!!」 喚く少女の声にぼたんは渋々という風に、後ろを見る。 蜂蜜色の髪を腰まで揺らせながら、白いワンピースの少女が若干涙目になっていた。 「ハァ……。 それでですね。もし夜中に電話すr」 「まだ続くの!!?」 ぼたんの話は長いとは、彼女の家族の談である。 「だいたい、どうして貴女そんな上から目線なんですか?『うっさい』とか『後ろ向け』とか」 「あなた、私が怖くないの……?」 「何ですか、話を逸らさないでください。」 「私メリーさんよ!?都市伝説よ!?もっとこう、何かあるでしょ!?」 「貴女が都市伝説な事は今は重要ではありません。今は貴女の常識はずれな行動について話をs」 「足は、いらんかねぇ?」 「はい?」「え!?」 二人の会話に介入してきた声の方を向く。 にこやかなお婆さんが大きな風呂敷を背負いながら立っていた。 都市伝説「足売り婆」 すぐにソレだと分かったメリーさんは、すぐに逃げる準備を始めた。 (これ以上この女の長話なんか聞いてらんないわ。婆が襲ってる間におさらばよ。) 「足はいらんかね、お嬢さん達。」 「…………達?」 メリーさんも襲う対象であった。 足売り婆、足はいるかと尋ねてくる都市伝説。 いらないと答えれば足を取られ、いると答えれば、無理矢理足を付けられる。 マイナーなのか、口裂け女のべっ甲飴やポマード、赤い紙青い紙に別の色で答えるような有名な対処法が存在しない都市伝説。 「ちょっと!なんで私にも聞いてんのよ!?同じ都市伝説同士でしょう!?」 「足はいらんかね?」 「私の方を向きながら言うな!!」 「落ち着いてください、メリーさん。こういう場合は契約です。」 「そ、そうね………………て、違うわぁ!!」 「あれ?何か間違いました?」 「契約ってのは都市伝説から人間に持ち掛けるのが話のセオリーでしょ!?なんであなたから契約の話してんのよ!!」 「そういうメタな発言はちょっと……」 「知るかああああ!!」 二人は完全に足売り婆を無視していた。 「足いらんかねぇ…………」 「このままじゃ埒が明かないわ。さっさと契約して終わらせましょう。」 いろいろと諦めてメリーさんはついに投げ出した。 「じゃあ契約ですね。」「ええ、力を貸してもらうわ。」 長い言い争いの果てに、やっと二人は契約した。 「それで、貴女は何ができるの?」 「敵の後ろに瞬間移動できるわ。」 「ありきたりですね。しかも敵を目の前に能力をばらすなんて……」 「あんたが聞いたんでしょうがあぁぁぁぁ!!」 言い争いは終わっていなかったが。 「じゃあ、とりあえず足売り婆の後ろに移動してくださいな。」 「いや、なんでよ!?待ち伏せされるじゃん!!」 「能力をしゃべってしまったのは貴女の責任ですよ?」 「あれ、私のせい!?」 「ほら早く能力使ってください。ほらほら。」 「だー、もー、やけくそだー!!『私メリーさん、今足売り婆の後ろにいるの』!」 突然、メリーさんの姿が消える。ソレと同時に足売り婆は後ろを向き、 「足はいらんかね。」 瞬間移動したメリーさんの足を掴む。 「うわぁ!やっぱ待ち伏せされ」 ドガンッ 「足、いら……」ズガンッ 「貴女、押し売りって知ってます?」ズガッ「迷惑なんですよ」グリッ「いらないっていったら?」グチャッ「取る?」グチ 「日本語って難しいと思いますよ?」ズチャ「でも、それだったら」ガンッ「いるって言った時は何もしない」ニチョ「そういうものでしょう?」 「ス、ス、ススス、ストォォォォォップ!!」 「何ですか、メリーさん」 「何、やってんの……?」 「何って、」 ぼたんの手には、高校生ぐらいの女の子の手より、工具箱の中が似合いそうな、金槌。 足売り婆がメリーさんを襲う為に振り向いた瞬間、ぼたんはソレを足売り婆の頭に振り下ろした。 何度も何度も。足売り婆が死に、光となり消えるまで。 「な、なんで、そんな物持ってんのよ……」 「二、三日前からかかってくる悪戯電話にいらいらしていたから。つい♪」 「あ…………………………そう」 「あ、そうだメリーさん」 「ハ、ハイ!?」 「契約したのですから、これからよろしくお願いしますね?」 「え、えぇ、よろしく……」 自分に使われていたかもしれない金槌を見つめながら、複雑そうにメリーさんは呟いた。 終